集中と分散

集中と分散

建築の構造を計画する際、たびたび意識することがあります。それは、「集中」と「分散」です。

耐震要素の配置でいえば、コアを作って集中型とするか、細かく散らして分散型とするかを考えます。
分かりやすい例を挙げると、純粋なラーメン構造は必然的に分散型の構造となります。また、壁式構造であっても、幅の小さな壁を平面的にバランス良く配置した構造は分散型といえるでしょう。

分散型は視界を塞ぐ大きな壁や斜材を必要としないため、フラットでヒエラルキーのない空間によく採用されます。KAIT工房(2008)やせんだいメディアテーク(2001)をイメージしてもらえると分かりやすいと思います。

まだまだ現代的な魅力のある構造形式ではあるものの、分散型では負担する力もバランスよく分散させる必要があるため、柱の配置や部材サイズに何かと制限がかかります。

対する集中型は、コアとなる耐震壁を設け、そこまで水平力を流す形式です。
コアと言うとプランの真ん中に耐震壁があるオフィスビルのような平面を思い浮かべるかもしれませんが、床剛性を上げて外壁だけを固めた建築も集中型といえるでしょう。

集中と分散は二極対立ではないものの、一度剛性の高い要素を入れるとそちらに力が流れていくため、反復試行の後に集中型に落ち着くケースも多いように思います。

「集中」と「分散」は、床や屋根といった水平構面とも関わりが深いです。スキップフロアのようにスラブが分節される場合、全てのスラブが(XY両方向について)コアに接していれば悩む必要はありませんが、そうでない場合は耐震要素を分散型にして水平荷重を処理することも検討します。

床同士を斜材で繋いで力をコアまで運ぶと言う手段もありますが、スラブ同士のずれから得られる抜けに影響が出るため、よく検討が必要です。

ここまで「集中」と「分散」について記述しました。先述の通り、この2つは必ずしも二項対立ではありません。むしろ「集中か分散か分からない」建築計画にもチャレンジしていきたいと思っています。
以前のコラムでも書きましたが、現代のものづくりにおいては「高度な技術だとしても、それを感じさせない」ことが魅力の一つです。

例えば、下の写真は集中でしょうか、分散でしょうか?